相続法の改正は、配偶者の法定相続分の引き上げ等がされた昭和55年以来、実に約40年ぶりのことであります。社会の高齢化がますます進み、相続開始時における配偶者の年齢も相対的に高齢化しているため、さらなる保護の必要性が高まっていました。
今回の見直しは、このような社会経済情勢の変化に対応するものであり、残された配偶者の居住の権利を保護するための「配偶者居住権」や実質的公平を図る観点から相続人以外の者の貢献を考慮するための「特別の寄与」など、多岐にわたる新たな制度が設けられました。これらの新しい制度は、2019年1月13日から段階的に施工されており、従来の相続の姿をガラッと変えることになりました。
【新しい制度】
①自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日施工)
⇒自筆証書遺言についても、財産目録については手書きで作成する必要がなくなりました。
②婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置(2019年7月1日施行)
⇒婚姻生活が20年以上である夫婦間で居住用不動産の遺贈または贈与がされた場合、原則として遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。
③預貯金の払い戻し制度の創設(2019年7月1日施行)
⇒各相続人は、遺産分割が終わる前でも一定の範囲で預貯金の払い戻しを受けることができるようになりました。
④遺留分の見直し(2019年7月1日施行)
⇒遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになりました。
⑤特別寄与の制度の創設(2019年7月1日施行)
⇒相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになりました。
⑥配偶者居住権の新設(2020年4月1日施行)
⇒配偶者は、自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになりました。
⑦法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(2020年7月10日)
⇒自筆証書遺言をより利用しやすくするため、法務局で自筆証書による遺言書を保管する制度が創設されました。